なんか、ややこしい話です。「富士には月見草がよく似合う」の月見草はツキミソウではないと!
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 普通は、月見草といえば黄色の待宵草(マツヨイグサ)で、昔からそう教えてもらったし、太宰治も「・・・ちらとひとめ見た黄金色の月見草の花」と書いている(昭和13年)ので、当時は一般的に黄色い花のマツヨイグサが月見草と認識されていたのでしょう。ところが、植物学的にはツキミソウ(月見草)は白い花であとで色が変わると!写真で見ると色違いのネモフィラみたいな。要するに、主に黄色い花を咲かせるのが待宵草の仲間、白い花を咲かせるのが月見草の仲間とされているようです。
■太宰治関係
http://www.ypec.ed.jp/yamakai/yamakai%2097.html
御坂峠「太宰治展室」富士には月見草がよく似合ふ」文学碑
https://muchacafe.hateblo.jp/entry/2017/10/01/224851
https://note.com/fufufufujitani/n/n9f70fe1e84fa
【引用】・・・老婆も何かしら、私に安心してゐたところがあつたのだらう、ぼんやりひとこと、「おや、月見草。」さう言つて、細い指でもつて、路傍の一箇所をゆびさした。
さつと、バスは過ぎてゆき、私の目には、いま、ちらとひとめ見た黄金色の月見草の花ひとつ、花弁もあざやかに消えず残つた。「三七七八米の富士の山と、立派に相対峙し、みじんもゆるがず、なんと言うのか、金剛力草とでも言いたいくらい、けなげにすくっと立っていたあの月見草はよかった。富士には、月見草がよく似合う」「富嶽百景/太宰治」
■朝日新聞夕刊
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■比較表
ややこしいのでマツヨイグサとツキミソウの比較表をまとめました。
花の家;http://www.azami.sakura.ne.jp/yasou/zoku/matuyoigusa.htm
趣味の園芸;https://www.shuminoengei.jp/m-pc/a-page_p_detail/target_plant_code-867
どちらもアカバナ科マツヨイグサ属で、最後の「種」が違う。
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 では、なんでこんなややこしいことになったのか?それは、マツヨイグサとツキミソウも同時代(江戸末期)に観賞用として伝来したものの、月見草は繁殖力が弱くて野生化せず栽培しにいことあって、ほとんど見られなくなったこと、一方で、マツヨイグサ(特にメマツヨイグサ)は繁殖力が強く、戦後~昭和30年代頃までは野にある黄色のマツヨイグサが全盛で、これが月見草と認識されたらしい。黄色が月を連想するのもあったでしょう。
 園芸のサイトでは、月見草=マツヨイグサとすることについて、「勘違い」とか、あからさまに「間違い!」と強調して一般市民の責任のように書いているが、すこし調べてみると、園芸業者がマツヨイグサを月見草として売っているケースがあったと!これでは間違うのも無理ないではないか。いい加減な業界や。
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 まともなサイトによれば・・・
https://www.yomeishu.co.jp/genkigenki/crudem/210630/
「オオマツヨイグサやマツヨイグサを「月見草」と呼ぶことは植物学上は間違いかもしれませんが、その違いを意識したうえで呼ぶことが肝要ではないでしょうか。」と断罪するのでなく、「奥ゆかしく」提案されていました。
今回のコース、撮影場所はこのあたり(緑マルあたり)
天野川堤防
 なお、いつも見る月見草、もといマツヨイグサは、今ではメマツヨイグサみたいですが、この個体がなにか、今は、区別できませんが、その花言葉は「浴後の美人」。そんな優雅で艶めかしい様子はうかがえません。それより、太宰治は形容した「金剛力草」がよく似合う。花はともかくその姿は雑草群のなかでしっかり生き抜くしたたかさえ感じます。